§ JOURNAL · ガイド
特許のフローチャートの書き方と作成例
特許のフローチャートは、処理の順序と条件を図で説明するものです。どの箱にも「処理する」とだけ書くと、実際に何が起きるか伝わりません。最初に入力、判定、出力を文章で整理し、それを図へ置き換えると矛盾を見つけやすくなります。
以下は説明用に作成した架空の温度監視処理です。実在の出願図面や、本製品の生成結果ではありません。
1. 描く処理の範囲を決める
この例では「温度を周期的に取得し、設定温度を超える状態が一定時間続いたら警報を出す」処理を対象にします。機器の初期設定や、利用者への通知先登録などは別の処理として扱います。
例の前提として、測定値を正常に取得でき、設定温度と設定時間が与えられているものとします。実際の設計ではセンサ故障、通信失敗、通知解除の条件も検討しますが、未確認の動作を図に勝手に加えないようにします。
2. 処理と判定を分ける
図へ起こす前の手順を、次のように番号で管理します。
- S101:温度を取得する。 取得元は温度センサ。
- S102:設定温度を超えているか判定する。 超えていない場合はS103、超えている場合はS104へ進む。
- S103:継続時間をリセットする。 次の測定周期にS101へ戻る。
- S104:温度超過の継続時間を計測する。 初回の超過時に開始し、超過中は計測を継続する。
- S105:設定時間に達したか判定する。 未到達なら次の周期にS101へ戻り、到達した場合はS106へ進む。
- S106:警報を出力する。 この図で扱う処理を終了する。
S101などは、この例で処理を参照するための識別子です。法律で指定された番号ではありません。図中でも本文でも同じ識別子を使うと、修正箇所を探しやすくなります。
3. 分岐と戻り先を図にする
処理を示す箱と条件を示す分岐を分け、条件分岐の矢印には「はい」「いいえ」など、どちらへ進むかが分かる表示を付けます。S102が「設定温度以上」なのか「設定温度を超える」なのかでも境界の動作は変わります。図と本文で同じ条件にそろえてください。
繰り返しの矢印は、単に上へ戻すのではなく、戻り先の処理を明確にします。この例ではS101に戻ります。継続時間を毎回リセットする矢印にしてしまうと、設定時間に達せず警報が出ないという別の動作になります。
4. 二つの入力例で経路をたどる
短時間だけ温度が上がる場合: S102からS104へ進んでも、設定時間に達する前に温度が戻れば、次の周期にS103で継続時間をリセットします。警報へは進みません。
温度超過が続く場合: S104の計測を続け、S105で設定時間への到達を確認したら、S106で警報を出します。
このように具体的な経路をたどると、分岐の逆転や戻り先の誤りを見つけられます。停止要求や異常系を扱う図なら、その入力でも同じ確認を行います。
5. 明細書の説明と対応させる
本文では「制御部12は、ステップS101で温度センサ11から測定値を取得する」のように、実行主体、処理番号、内容をつなげます。処理図だけで装置の接続関係を説明しきれない場合は、別の構成図を用意します。符号と図面説明のそろえ方も参考にしてください。
チェック時は、すべての矢印の行き先、分岐条件、ループの終了条件を確認します。通常の縦長フローをそのまま小さく縮めず、実際の出力サイズで文字が読めるかも確認しましょう。
作図へ進む
AI特許図面作成でドラフトを作る際は、上のような処理一覧と分岐条件を入力材料にできます。図が生成されたら、処理の追加や省略がないか元の一覧と比較してください。図面作成の操作ガイドでは計画から出力までの流れを説明しています。
参考資料
e-Gov法令検索「特許法」第36条の、発明を実施できる程度の明確かつ十分な説明という考え方を踏まえて整理しています。本記事の図形や処理番号の使い方は説明上の例です。図の存在だけで記載要件や特許性を満たすわけではありません。